ついにベールを脱いだ『キングダム』76巻。物語は中華統一へ向けた最初の標的、韓攻略戦のクライマックスへ突入する。そこには、国の運命を背負った男たちの壮絶な覚悟、魂を削り合う死闘、そして読者の心を締め付けるミステリアスな伏線が待ち受けていた。本記事では、76巻の核心に迫るあらすじとネタバレを、熱い感想と共にお届けする。
『キングダム』76巻 発売情報
- 発売日: 2025年7月17日(木)
- 価格: 770円(税込)
- 収録話: 第824話~第834話あたり
涙の決断と静かなる開戦|韓攻略戦、核心のネタバレ
76巻の幕開けは、紀元前230年、秦による韓攻略戦の大詰め。しかし、そこに鳴り響くはずの鬨の声はなかった。
“売国奴”の汚名を着てでも…王の涙の決断が国を動かす
秦の大軍を前に、韓が下した決断は「無血開城」。韓王は、腹心中の腹心である張印にのみその意を伝え、民の命を戦火から守る道を選んだ。
「韓王の命により、韓は降伏する」
この一言が、秦将・騰を王都・新鄭へと迎え入れる。しかし、それは決して平坦な降伏ではない。国を明け渡すという、王としての最大の屈辱と苦悩。その裏には、民を想う王と、最後まで国に殉じようとする者たちの葛藤が渦巻いていた。この静かなる開戦こそ、今後の戦乱の世を予感させる、重く、そして悲しい幕開けなのである。
英呈平原の激闘!76巻最大の見どころ
無血開城は、戦いの終わりを意味しなかった。王都を守る最後の砦・英呈平原で、韓軍の誇りが秦軍の前に立ちはだかる。
これが将軍の見る景色か!信、王騎の教えを超え、魂の一撃を放つ
飛信隊の信は、ついに副将として戦場の中核を担う。彼の前に現れたのは、韓の副将・博王谷。国民すべての「想い」をその双肩に背負い、凄まじい膂力で信に襲いかかる。
「お前たち侵略者に、俺たちの憎しみがわかるか!」
民の想いの重さに、信は一瞬、押し潰されそうになる。しかし、脳裏に蘇るのは、かつて共に戦場を駆け抜けた大将軍・王騎の言葉。信は、憎しみだけではない、仲間との絆、そして守るべき民の未来という「重み」を矛に乗せ、覚醒する。
渾身の一閃が、博王谷の首と両肩を同時に断つ。
それは単なる武功ではない。将軍として、人の想いの複雑さとその先にあるものを背負う覚悟を決めた、信の成長を刻みつける魂の一撃だった。この勝利が飛信隊の士気を爆発させ、戦局を大きく動かす起爆剤となる。
静かなる死神、舞う。羌瘣の刃が信の窮地を切り裂く
信が死闘を繰り広げる裏で、もう一つの戦いが静かに進行していた。博王谷が呼び寄せた援軍・沛曇将軍の進軍を阻んだのは、羌瘣率いる羌瘣隊。圧倒的な武で敵を蹂躙し、沛曇の首に肉薄する羌瘣の姿は、まさに戦場の死神。彼女の冷静かつ的確な判断が、信の勝利を盤石のものとしたのだ。
新鄭に響く不気味な叫び…最大の謎と深まる人間ドラマ
戦いは終わったはずの王都・新鄭。しかし、そこには新たな緊張と謎が待ち受けていた。
「姫を頼む」誇りが交差する、男たちの覚悟
中央西壁では、降伏の報を知りながらもなお武器を捨てぬ韓の将・洛亜完が騰の前に立ちはだかる。彼の忠義は、ただ王のためだけではない。戦乱の世で犠牲となる王族と民を守るため。その誇り高き姿に、騰は静かに敬意を表し、韓の姫・寧の身を託す。敵味方を超えて交錯する、武人たちの魂のやり取りは、『キングダム』の真骨頂と言えるだろう。
謎の“悲鳴”の正体とは?読者を震撼させるミステリー
物語の終盤、読者を震撼させる事件が起こる。礼が「悲鳴みたいなのが聞こえた」と口にし、羌瘣が血相を変える。この不気味な“悲鳴”の正体は何か?ファンの間では様々な憶測が飛び交っている。
- 王族襲撃説: 降伏した寧や韓王が、何者かに襲われたのではないか?
- 刺客察知説: 夏候龍など、新たな刺客の気配を羌瘣が察知した可能性。
- 象徴的演出説: 王族が国を失った心の叫び、その無念が“悲鳴”として伝わったという芸術的表現。
この謎は、間違いなく今後の物語を揺るがす大きな伏線となるだろう。一体、新鄭の奥深くで何が起こっているのか?
信の成長と飛信隊の絆|武力だけではない“強さ”
76巻は、信個人の成長だけでなく、彼が率いる飛信隊の“在り方”をも深く描き出している。
民の痛みを識る将軍へ。信が見せる“新たな王の剣”の姿
南陽での民との交流を通し、「侵略される側の痛み」を肌で感じた信。彼の戦いは、もはや個人的な武功や出世のためだけではない。中華統一を目指す嬴政の理想、その理想の先にある平和な世を実現するため。その優しさと覚悟こそが、信を真の将軍へと押し上げている。
古参兵・渕さんが見せた“飛信隊の魂”
博王谷から民の憎悪を突きつけられた信。その窮地を救ったのは、武力ではなく、古参兵・渕さんの言葉だった。彼が取り出したのは、南陽の民から贈られたお守り「南陽石」。
「これが答えだ!」
武力では劣るかもしれない。しかし、民に寄り添い、信頼を勝ち得てきた飛信隊の歩み。その事実が何よりも雄弁に、彼らの正義を証明した瞬間は、多くの読者の涙を誘ったに違いない。
史実と物語の融合、そして未来へ
『キングダム』の魅力は、史実という骨格に、原泰久先生の描く熱い血肉が与えられている点にある。韓の滅亡という史実をベースに、ここまで濃密な人間ドラマを描き出す手腕には脱帽するほかない。
さらに、2026年夏には実写映画第5作の公開も決定。原作と映画、双方の相乗効果で『キングダム』の世界はますます熱を帯びていくだろう。
まとめ:76巻は新たなる伝説の序章
『キングダム76巻』は、韓攻略戦という一つの戦いの終わりを描きながら、同時に信が真の“大将軍”へと覚醒する重要な転換点であり、秦が“中華統一”という理想の重さを知る、新たなる伝説の序章でもある。
信と博王谷の魂の激突。韓王の涙の決断。そして、新鄭に響いた謎の悲鳴。散りばめられた伏線と、キャラクターたちの深まる絆から、一瞬たりとも目が離せない。ぜひ、この歴史の目撃者となってほしい。